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松山地方裁判所 昭和46年(わ)17号 判決

本店所在地

愛媛県越智郡波方町大字波方甲二、二六六の一

瀬野汽船

株式会社

(右代表者代表取締役 瀬野政次郎)

本籍

愛媛県越智郡波方町大字波方甲二、五五二

住居

同県同郡同町大字波方甲二、二六六の一

会社役員

瀬野政次郎

大正八年八月二五日生

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官福永宏出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人瀬野汽船株式会社を罰金三百万円に、被告人瀬野政次郎を罰金二百万円にそれぞれ処する。

被告人瀬野政次郎においてその罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人瀬野汽船株式会社は、資本金三一、八五〇、〇〇〇円(昭和四五年八月五日までは三一、〇〇〇、〇〇〇円)で、肩書所在地に本店を置き、海運業を営業目的とするもの、被告人瀬野政次郎は、右会社の代表取締役として同社の業務全般を統轄掌理していたものであるが、被告人瀬野政次郎は、同社経理担当の妻瀬野マサミ等と共謀のうえ、同社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、収入を脱漏しあるいは架空経費を計上して、簿外預金を蓄積する等の不正な方法により、同社の所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、右被告人会社の実際所得金額が三七、八六三、四〇五円あつたにもかかわらず、昭和四三年二月二九日、今治市営盤町四丁目五の一番地所在の所轄今治税務署において、同税務署長に対し、同社の所得金額が一八、五五〇、九七二円であり、これに対する法人税額が五、七一五、九〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同社の右事業年度の正規の法人税額一二、四六〇、一〇〇円と右申告税額との差額六、七四四、二〇〇円をほ脱し

第二、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、前記被告人会社の実際所得金額が三六、二四三、六七五円あつたにもかかわらず、昭和四四年二月二八日、前記所轄今治税務署において、同税務署長に対し、同社の所得金額が七、六三二、四五七円であり、これに対する法人税額が二、二四五、一〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて前記会社の右事業年度の正規の法人税額一二、二四四、一〇〇円と右申告税額との差額九、九九九、〇〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人瀬野政次郎の当公判延における供述ならびに同人の検察官(二通)および大蔵事務官(六通)に対する各供述調書ないし各質問てん末書

一、被告人瀬野政次郎(一通は被告人会社代表者として作成)瀬野利一共同作成名義の上申書二通

一、被告人会社代表者瀬野政次郎、瀬野マサミ、真木敏正共同作成名義の上申書

一、瀬野マサミの検察官および大蔵事務官(五通)に対する供述調書ないし各質問てん末書

一、瀬野利一の検察官および大蔵事務官(三通)に対する供述調書ないし各質問てん末書

一、柳橋度喜男、真木敏正(二通)、檜垣愿および越智敏通の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、柳橋度喜男作成の上申書

一、大蔵事務官作成の上申書

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書(検察官請求番号二のもの)、脱税額計算書(同三のもの)および報告書

一、浜崎一雄作成の「瀬野汽船への支払保険金御照会の件」と題する書面

一、大沢義数の大蔵事務官に対する質問てん末書

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書(検察官請求番号四のもの)および脱税額証明書(同五のもの)

一、黒岩国彦および小田団の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、菅野忠勝作成の上申書

(法令の適用)

被告人瀬野政次郎の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項、刑法六〇条に該当し、右はいずれも被告人瀬野汽船株式会社の代表者が同社の業務に関して犯した場合であるから、被告人会社は、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑を科すべきものであるところ、被告人瀬野政次郎においては、判示認定の脱税額は決して少額とはいえないものの、同被告人が本件を犯すに至つた動機は、海難など危急時に備えて行なつた会社防衛策などによるものであるともみられ、特に私利私欲に走つた悪質なものとも思われず、また本件発覚後大いに反省し、経理面について公認会計士の関与を強化するなどその改善に努めていることがうかがわれ、また本件のほか既に時効にかかつた分を含めて昭和四〇年から昭和四四年までの各事業年度の修正申告をし、重加算税、過少申告税を含めて合計三七、四〇一、五〇〇円の国税を納付し、これに関連して地方税二二、〇〇〇、〇〇〇円も納付済であること、その他諸般の事情を考慮して、所定刑中いずれも罰金計を選択し、右両名の各罪はいずれも刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により各罪所定罰金の合算額範囲内で、被告人瀬野汽船株式会社を罰金三百万円に、被告人瀬野政次郎を罰金二百万円にそれぞれ処し、被告人瀬野政次郎においてその罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鍵山鉄樹 裁判官 緒賀恒雄 裁判官 梶村太市)

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